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広島高等裁判所 昭和35年(ラ)40号 決定 1960年9月08日

抗告人 瀬崎林業株式会社 代表取締役 瀬崎武熊

訴訟代理人 豆原敏雄

主文

原決定を取消す。

本件参加を許可する。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載の通りである。

民訴第六四条によれば、補助参加は訴訟の係属を前提とする。同条にいわゆる訴訟が判決手続を指すものであることは明白である。しかし、判決手続以外の決定手続、抗告手続等においても、その手続において当事者が相対立し、その間の争を裁判により解決することを目的として手続が進行する場合がある。右の場合の手続は、判決手続に類似し、相対立する当事者は民事訴訟法の規定に従い互に攻撃防禦方法を提出する。そして、右手続における裁判の結果につき法律上の利害関係を有する第三者が当事者の一方を補助するためにその手続に参加の申出をした場合、その申出を拒否しなければならぬ合理的な理由は存在しない。すなわち、判決手続以外に裁判を以て完結する手続においても、その手続が相対立する当事者をふくむ等判決手続に類似する構造を有する限り民訴第六四条を準用して補助参加を認めるのを相当とする。競売法による競売については、その性質の許す範囲において民事訴訟法の規定を準用すべきものであるから、競売法による不動産競売手続開始決定に対しては民訴第五四四条による異議の申立をなし得る。右異議については口頭弁論を経又はこれを経ずして決定を以て裁判される。右口頭弁論の開かれた場合は勿論、口頭弁論が開かれなくても相手方が定められた異議申立人と相手方との間における紛争を解決することを目的とする形式において手続が進行する場合には、右異議手続においても民訴第六四条を準用して第三者の補助参加を認めるべきものである。本件競売手続開始決定に対する異議事件においては相手方として債権者清水文明が定められ、当事者間において本件抵当権の効力をめぐつて争われ口頭弁論が進行しているのである。従つて、本件異議手続に民訴第六四条を準用すべきものであることは、前述したところにより明らかである。抗告人は本件異議手続の口頭弁論において相手方清水文明を補助するために参加の申出をなし、その補助参加の理由として本件抵当債権は実質上抗告人の権利に属するものであるが、登記手続の便宜上抗告会社の社員たる相手方を権利名義人として本件抵当権設定登記をなした旨主張している。そして原審証人中山鹿雄の証言(第三回)により成立を認め得る乙第九、第十号証の各一、二、原審証人中山鹿雄(第一、二、三回)、桐山寛治の各証言、原審における相手方清水文明本人尋問の結果によれば、抗告人の右主張事実を十分に疏明できる。しからば、本件異議手続において異議申立人等の主張が認められ本件抵当権設定が無効であるとして本件競売手続開始決定が取消されるならば、抗告人が実質上の権利を有し信託的に相手方の名義を以て登記せられている本件抵当権の実行は許されないことになり、抗告人において損失を被ることになるのであるから、抗告人が本件異議手続における裁判の結果につき法律上の利害関係を有することは明らかである。

しからば、抗告人の本件補助参加の申出はこれを許すべきものであり、右と結論を異にする原決定は取消をまぬがれない。

よつて、主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 岡田建治 裁判官 佐伯欽治 裁判官 松本冬樹)

抗告の趣旨及び理由

原決定を取消し抗告人の補助参加申出はこれを許可する

との御判決をもとめる

原裁判所は競売開始決定に対する異議は民事訴訟法第六十四条の訴訟に該当するとは言えないから補助参加申出は却下をまぬがれない一歩譲つてこの競売開始決定に対する異議事件に補助参加出来るとしてもこの訴訟の結果につき法律上の利害関係を有するものでないと説明せられたけれども

一 補助参加は判決手続以外の裁判手続にも補助参加の制度は準用され、たとえば決定手続(但し抗告手続破産宣告手続は除外する)執行方法に関する異議、仮差押仮処分命令手続に補助参加出来る事は数多の学説判例に依り明らかであり右決定は民事訴訟法第六十四条の解釈を誤つたものと思料する

二 本件の相手方である清水文明は補助参加申出人会社の社員であり抵当権者たる清水文明はその権利の原因たる債権が補助参加人会社の債権なる事は本件の全証人及び申立人相手方本人の各証言に依り明らかであり相手方と補助参加申出人会社とは一体不離の関係にあるもので申立人らの主張の抵当権設定契約の無効は換言すれば実質上の抵当権者である補助参加申出人会社に対する表面上の抵当権設定契約の無効の主張と思料するを当然とするものであり隅々相手方より補助参加人に対する表面上の抵当権移転登記手続のみが不能のため相手方名義に依る権利の実行をなしたものである

右の事実より訴訟の結果となるべき訴訟物たる権利関係について当然利害関係があるので補助参加申出人の参加の利益があるものである

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